三井化学株式会社 三井化学ESG推進室 MOLpメンバー

八木 正

三井化学でオープンラボ「MoLp」を立ち上げ、社外との協働プロジェクトを多数成功させてきた八木さん。有志の集まりでありながら、さまざまなアウトプットを出しているMoLpは、同じく有志活動のFood Up Islandにとってもあこがれの先輩です。かっこよく、楽しく。私たちも追いかけます!

MoLpとは、どのような組織なのでしょうか。

簡単に言うと、既存素材・既存技術の価値や魅力を再発見し、可能性を広げるオープンラボです。三井化学ではさまざまな素材を扱っていますが、どの素材も独自の特徴があります。たとえば「水をよくはじく」とか「特定の波長光を吸収する」とか、いろんな特徴ですね。その各々の特徴を生かして商品に使われていますが、素材によっては個性的ゆえに用途が限られてしまうものもあります。そういう素材を今までとは違う視点からとらえて、活用先を広げ、世にないプロダクトを開発するのがMoLpです。

具体的にはどのようなプロダクトを開発してきたのでしょうか?

多岐にわたりますが、よく面白いといわれるのは「風鈴」や「椅子」、「お盆」などですね。「風鈴」は薬の錠剤包装シートに使われるプラスチック素材、「椅子」はメガネレンズに使われる光学プラスチック素材、「お盆」は地域の未利用資源(木粉や緑茶粕など)を活用しています。どれも、もともとは別の用途だった素材や、使われず捨てられていた素材を、その特徴を引き出して、生まれ変わらせたプロダクトです。

錠剤の包装シートで風鈴をつくるとは、意外すぎてなかなかイメージがわきません…。もう少し詳しく教えて下さい。

薬の錠剤包装シートには、APEL®(環状オレフィンコポリマー)というプラスチック素材が使われています。この素材は耐薬品性が高いので薬の包装に使っていますが、実はもう一つ面白い特徴があって、衝撃が加わると音が鳴るんです。錠剤をシートから出すときに「パキ」という音がしますよね、あれです。でも音が鳴りすぎると、患者さんが不快に感じるらしく、工場では音の強い製品は不良品として廃棄していました。そこで音という性質を生かして何かつくれないかな、と考えたわけです。捨ててしまうなんてもったいないじゃないか、と。MoLpでいろいろと考えた末、風鈴にすることを思いつきました。プラスチックとは思えない涼やかな音が鳴る風鈴で、その名も「こだま」。風鈴のれんストリートという展示会にも出展したんですよ。

Q, とても面白いですね!食品でもいろいろな原料や素材を使っていますが、今とはまったく違う使い方ができたら新しい味、製品が生まれそうです。視点を変えて素材特徴を捉えなおす秘訣はなんでしょうか?

そうですね…その素材の専門家だけでなく、異分野の人を集めてアイデア出しすることでしょうか。専門家にとってはジャマに感じる「短所」でも、異分野の人には秀でた「特長」に見えることはよくあります。先入観がなく、フレッシュな見方をしますからね。私たちの風鈴で言えば、もともと耳障りだと思われていた「雑音」を、心地よい「音色」に転換しました。視点を変えるために、クリエイターやアーティスト、社外企業、NPOともコラボしてプロダクトを開発しています。

Food Up Islandも、食以外の異業種とコラボレーションしていきたいと考えています。異業種の人を巻き込んで一丸となってプロジェクトを進めるのに大切なことは何ですか?

「わくわく」や「ドキドキ」が生まれるストーリーだと思います。誰かを巻き込もうと思うなら、その人にとっての「わくわく」をとことん考える。みんなを同じ方向に向かせたいなら、共通する「わくわく」「ドキドキ」につながる1つのゴールを掲げる。人間って、わくわくすると前のめりになるんです。そしてみんなのわくわくが掛け算されたとき、大きなパワーが生まれるんですよね。私がそれを強く実感したのは、「FASTAIDTMウイルス・スウィーパータオル」という災害用品を開発したとき。この製品は、NPOや、業種をまたぐ複数の企業と協働開発しました。業種も背景も違うメンバーでしたが、「自分の技術で被災者を救えるかもしれない」というストーリーに共通してわくわくしていました。みんな同じ日本人として、東日本大震災を目の当たりにしましたからね。だから、全員が同じ方向を向いて、製品化を達成できたのだと思います。

※FASTAIDTMウイルス・スウィーパータオル…次亜塩素酸ナトリウムと圧縮タオルが2in1のパッケージになった製品。平時は長期保管し、災害時には避難所などでワンタッチで除菌タオルにできる。災害時だけでなく、病院や介護施設、途上国での活用も期待される。

お話を聞き、私たちFood Up IslandもMoLpのようにアウトプットを出していきたいと感じました。Food Up Islandへの応援メッセージをお願いします!

同業他社が集まり、競合ではなく協働しようというFood Up Islandの考え方や取り組みは素晴らしいと思います。私たち化学業界では実現できていないことです。食品製造では様々な原料や素材を扱っていますし、残渣や規格外品など、廃棄物も多く生じると思います。それらを新しい視点からとらえなおして、特徴を最大限引き出し、会社の枠を越えて共有できれば、きっと今以上に「価値ある素材」へと転換できるはず。業界は違いますが、私たち三井化学ともぜひ一緒に活動していきましょう。